今回のインタビュー相手は、「日本の音楽シーンをひっくり返す」と熱々で語る、トリックモンドの表現太郎さん。1980年代一世を風靡したおかげ様ブラザーズにも在籍していた彼が、自らフロントに立ち、目指すものとは...? 表現太郎として、そしてトリックモンドとして表されるワールドを覗き見てきました。
トリックモンドとは?
メンバー
- 表現太郎 (作家、ミュージシャン)
- 野村ヒロシ (ハンドメイドのジャンブルドラム)
- 熊澤洋子 (バイオリン)
- 柴田ヒロユキ (チューバ)
- 和田大樹 (オンド・マルトノ)
これは音楽ではない。!!奇譚(ストーリー)だ!!
忘却の彼方にあるヌーヴェルバーグの香りを呼び覚ます。京都発 /ヨーロッパ経由。
珍奇でモンドで唯一無二なめくるめく世界にようこそ。
(HPより))
ハンドメイドの楽器?ヌーヴェルバーグ??なんじゃこりゃ、そう思ったらトリックモンドの思うツボ。よく分からない、けど気になる。その好奇心こそがミソなのです。
チューバの柴田さんを連れて渡欧した表現太郎さんの別ユニット、ピエモンテルノも絶好調です!
彼らはドイツ・チェコ・オーストリアにて37日間・45本のライブをこなしたばかり。今後の活躍が楽しみです。
表現太郎インタビュー
誰もしていないことを成すことに、人生を捧げる。
昔から、人と同じことをするのが嫌いな子供だったんですよね。学校では協調性がないと言われ、先生や親を困らせていました。「みんなと同じことをやりたくない」という想いは今でも全くブレていません。"普通"に結婚して子供を作って働いて...という世界には全く興味がない。誰もやっていないこと、誰も思いつかないことを我が国に提出することに、人生を捧げたいと思っています。
なぜ「音楽」で人と違うことを目指すのでしょうか。
The Beatlesに出会ったことが大きいです。彼らは誰も思いつかないコード進行と誰も思いつかないメロディの関係性を高めた発明家です。The Beatles以前の音楽は極上のメロディーに普通のコードでしたが、彼らはそこに変わったコードを組み合わせ、メガトン級の響きを作りました。クラシックもすごいですが、The Beatlesはギターやピアノなど、身近な楽器で発明をしていることがすごい。表現太郎も、誰も思いつかないコード進行・メロディ・歌詞の世界観を完成させたい。そのためには、国境を越える音楽の力が必要なんです。
発明家とは、一般的にはあまり語られないThe Beatlesの一面ですね。
人と違うことを思いつくために、行っていることはありますか。
日常的に、人と違う行動をとるようにしています。例えば背後で大きい音がすると、人は反射的に振り向くじゃないですか。そこをグッとこらえて振り向かない、とか(くだらねー笑)。反射的に動くことは、なし。みんながいいなあと思ってることも、なし。好きなラーメン屋も、みんなが並び出したらもう行かない...。人と違う行動をとれるようになるには努力が必要で、小学生の頃から頑張ってやっていました。おかげで今ではいちいち違う行動を取るので、逆男くんと言われてしまっています(笑)。そしてレールを引く人間として常に孤独を感じます。
トリックモンドのスタイルも、曲と曲の間に語りを入れるなど、独特ですよね。
どこから発想を得ていますか。
おそらく、バンド形態で表現する人々は取り入れないスタイルだと思います。ですが、ヨーロッパの映画やアニメーションにはかなり影響を受けています。例えばフレデリコ・フェリーニや、ヤン・シュバンクマイエルなどです。
トリックモンドでは、使う言葉や登場人物などを、あえて日常生活ではピンとこないものにしています。「みんなで共有しようよ」という音楽をやっているわけではないので、現実味を感じられてしまったら負け。あくまでもとことん非日常を感じてもらいたいです。
表現太郎の世界を楽しんでくれる仲間
そのような世界観は、表現太郎さんお1人で作り上げるのでしょうか。
以前はそうでした。カセットテープを相方に、逆回転を多用したSEを作って、ステージでシンクロして...。でも今のメンバーになってやっと、みんなで一緒に世界観を作り上げることができるようになりました。私の脳内イメージの具現化です。ステージで世界観を創り上げるために重要なタペストリーは、ジャンブルドラムの野村くんが描いてくれました。彼は美術の先生でありながら、変わった空間作りが好きな人なんです。表現太郎の世界には必要な人です。
現在のメンバーは、どのように集まりましたか。
元は私が経営するライブハウス、ネガポジの出演者たちでした。彼らをスカウトしたのは、表現太郎がやっていることを「相当面白いと思ってくれてる」という確信を持ったからです。今の仲間は、表現太郎の世界を分かってくれて、存分に楽しんでくれる人たちです。それぞれ全く違う世界で音楽をしていた人ですが、最高の両腕両足を厳選できたと思っています。
ライブを拝見していても、メンバーの皆さんが楽しそうな様子が伝わってきました。
曲作りは、どのように進めていますか。
まず誰も思いつかないような(すみません、何度も)コード進行を考える。そして、その上に不思議なメロディーと言葉をのせる。妙なメロディーや言葉ほど、人の脳裏に残るんですよ。そしてある程度の枠を完成させたら、それをメンバーと共有します。その後、弦楽四重奏を作るかのごとくセッションを繰り返しながら、各々の立ち位置を決めていきます。そうすると特に意識をしなくても、企業音楽家たちの概念から外れたものがどんどんと出来てしまいます(笑)。
まだまだ我々の認知度は低いですが、少数派が多数派に変わっていく、これが気持ちいいんですよ。もちろん、私が面白い!と思ったことが、世の中にとっては全然面白くないことかも...という不安は常につきまといます。それでも事実、表現太郎の世界を面白いと思って集まってくれる人がいて、尚かつ、そういう人たちが増えてきていることは最高に嬉しいですね。
少数派から多数派に...ワクワクしますね!
トリックモンドの世界に対する、人々の反応はどうですか。
基本的に真っ先に聴いて反応してくれるのは、子供と外国人です。ヨーロッパ行って路上ライブをすると、めちゃくちゃウケるんですよ。どんどん人が集まって、「これは誰の曲?あなたのオリジナル?すごーい!」って、握手を求めてくる。これをまだまだ反応の薄い我が国、日本で味わってみたい...!日本で路上ライブをやっても、大人はほぼ素通りです。表現太郎の音楽は聴いたことのないもの、自分の知っている枠に収まらないものだから、スルーしてしまうんですね。「分からないもの」に対する好奇心をどこかに置いてきたようです。1970年代まではまだまだ好奇心に渦巻く国だったんだけどなー(泣)。
最後に、表現太郎さんの目指すゴールを教えてください。
「我が国で表現太郎ミュージックを新ジャンルとして認知させる」
これしかないですね。これを実現しないと、死んでも死にきれません。ゴッホにはなりたくない。ゴッホみたいに死んでから売れるのは、なし。彼は世界中でこんなに自分の絵が売れてるってこと知らないんですよ!!
まだ大きな夢を見ている真っ最中。諦めるどころか、むしろ上り調子、上昇気流に乗っかった!と思っております。
どうぞよろしくお願いします。
あとがき
インタビューはトリックモンドのライブ終了後、KDハポンにて行いました。まだまだライブの熱が冷め切らず、ファンの方々がメンバーのみなさんを取り囲んでいるところを割入らせていただきました(ご協力ありがとうございます)。
筆者が強く感じたことは、メンバー、ファン、とにかく会場にいる全員が、表現太郎さんの創り出す世界を楽しんでいるということ。また、表現太郎さんの力強い言葉も印象的でした。こうもハッキリと夢を語ってもらえると、気持ちがよいものです。
表現太郎ミュージックが広く認知される日を、心待ちにしております。
インタビュー, 文: ヒカル
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