【岡林風穂】インタビュー

岡林風穂

2019年新人ベストアクトとも囁かれる、期待のシンガーソングライター、岡林風穂。

 

その魅力は何と言っても、ユニークな歌詞と、堂々とした声、振舞い。

彼女の言葉はユーモアの中に刺さるものがあり、ハッとさせられます。

歌声はシンプルですが、時折、感情がこみあげるかのような震えた声を聴かせます。

立ち姿は堂々としており、荒野に一人たたずんでいるかのよう。筆者は、彼女の『荒野にて』という曲を勝手にイメージソングに認定しています。

 

『こもれび』歌詞はもちろん、終盤の展開が面白い曲です。



インタビュー

先日のハポンでは堂々としたステージを見せてくれましたが、まだライブは数回目という岡林さん。何を考えて、どんな生活をしているのでしょうか。

 

とりあえず出て行け でかい虫

勝手に勝手に ここにいる

逃がしてあげる

ふざけすぎている愛

バナナ by岡林風穂)

 

曲作りを始めたのは、いつ頃ですか?

 

20歳くらい、ですね。ギターを初めて買ったんです。最初は好きな曲のコピーをしてたんですけど、自分で曲作ってみたらハマっちゃいました(笑)。ライブをし始めたのは去年か一昨年くらいです。お世話になっていた古本屋さんが、歌えばいいじゃんって言って歌わせてくれて...。人前で何かするようなタイプじゃないので、今こうしてライブに出ているなんて、考えられないです。

 

ライブがまだ数回目とは思えないほど、堂々とした良いパフォーマンスでした。

曲は、どのように作っていますか?

 

基本的には、歌詞からですね。日常の何気ないこととか誰かが言ったこと、語呂が面白いことを携帯にメモして、それを歌詞にしています。例えばトンネルがめっちゃ長くて「どんだけデカイ山なんだ」って思ったこととか、トイレにいたらアメイジンググレイスの口笛が聞こえてきたこととか。「えっ?!」って思ったことをメモすることが多いです。

 

私は、「とりあえず出て行けでかい虫」って言う歌詞が好きなんですけど、これも実際あった話ですか?

 

そうですね(笑)。職場にめっちゃデカイ虫が出て、それをお客さんが「うわー!!」って踏んづけてたことがあったんですよ。翌日にもまた同じ虫が出たんですけど、今度はそれを、同僚がナウシカのような態度で逃したんですよね。「大丈夫だよ」って話しかけながら。そのギャップがすごくて、感動しちゃって、できた歌です(笑)。踏んづけてたのを見た直後だったので、同僚の行動がふざけすぎてたんですよね、いい意味で。「マジこの人ふざけすぎてるー、すごい!!」って思って。

 

「ふざけすぎてる」って、いい意味だったんですね(笑)。

メロディは、どうやって作っていますか?

 

メロディは、動いている時に一番浮かびます。職場で掃除してる時とか。ふと思いついたら、電話するふりをしてボイスレコーダーに録音してます(笑)。朝一で動き出す時って、すごい考えれますよね。なんなんですかね、あれ。

 

アルバムでは、デザインもされていますよね?

 

CDのジャケットをデザインするのが楽しいんですよね。それをしたいがために曲作るみたいな部分もあります。絵を描いたりするのは昔から好きです。

 

楽しくないのに笑いたくないよ

ありのままを愛していたいよ

正直だけが正しさじゃないよ だから

寒がりのふりしてもいいような気持ち

わかるって言ってよ

コメダって言ってよ by岡林風穂)

 

風穂さんは、どうして音楽を作るんですか?

 

私は音楽を通じて、気持ちを発散しているんだと思います。「私はこういうことを思ってるんですよ」っていうのを知ってほしいのかな。一方で、伝わらなくていいっていう気持ちもあるかもしれないです。分かる人だけ分かってほしいっていうか...。私が感じた気持ちって、みんな経験しているんだけど、その気持ちを他の人に言ってもらったことがないだけなのかもしれないんですよ。そういう人たちに届いたらいいなと思います。

私は、音楽を通じて自分の気持ちが代弁されたような経験をした時に、すごく気持ちが良かったんです。「私の気持ち、知ってくれてたんだ!」みたいな。自分の歌を通じて、そういう気持ちになる人がいたら、すごいことだなって思います。自分が歌を歌うことで、「あ、知ってる!その気持ち!」って思えるような...。それだけで安心することもあると思います、自分がそうだったので。

 

確かに、「こういう気持ちって私だけじゃなかったんだ」って安心すること、ありますよね。その人と直接語り合うことはできなくても、ちゃんと私の気持ちを知ってくれている人がいるんだ、というか...。

 

私は中学生/高校生くらいの時に、言葉にすごくコンプレックスがあったんですよ。自分が話すことも苦手だし、人に言われたことで傷つくこともあって...。言葉を出すのも受け取るのも嫌になっていました。それで大学生の時はあまり人と話さなかったんですけど、その時に吉本ばななの言葉に出会いました。「正直に言うことが誠実じゃないのよ。何を言うか選ぶセンスが誠実なのよ。」っていう台詞があって、それがすごい刺さって。すごい衝撃的で。「そうですよねえ!(泣)」みたいな。言葉ってすごい力を持ってるんだ、って思いました。傷つくこともあるけど、助けられることもあるんだ、って知ったんですよ。

 

『キッチン』の台詞ですね。

他にも、好きな作家はいますか?

 

村上春樹とか、好きですね。文体が好きなんですよ。スピッツって分かりますか?村上春樹は、スピッツっぽい感じがします。「この言葉の後にこの言葉くるの?!」みたいな。

例えばスピッツの曲で、「バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日」から始まる歌があります。≪バスの揺れ方≫の後に≪人生の意味≫って続くんですよ?!一見関係がない言葉だけど、でもなんか、分かるじゃないですか。こういう、こそぐられるような感じが好きですね。村上春樹も私の中では似ていて、「この言葉の後にその言葉くるんだ」「この感情の後にその感情くるんだ」っていう感動があります。

 

確かに風穂さんの曲も、ここでそうくるんだ、って驚くことがあります。

 

この言葉の後にこの言葉きたら面白いかな、とか考えてます。前後のつながりは、あったりなかったりしますね。あるのかな?

 

音楽的な影響は、受けていますか?

 

ないと思ってる...けど、あるんでしょうね。THE BLUE HEARTSとか、andymoriとかかな。中学生くらいの時にラジオからandymoriが流れてきて、本当に電気が走ったような体験をして...。『楽園』っていう曲だったんですけど、歌詞や声が私にとって新しかったんです。「歌って何を歌ってもいいんだ」「歌っちゃいけない歌なんてないんだ」って思って、当時の自分にすごく刺さりました。『楽園』は、ハスキーで味わい深いボーカル×早めのテンポで楽しい雰囲気なんですけど、歌詞は結構暗めなんですよね。そのバランスが、気持ちわる・気持ちいい、みたいな感じの歌でしたね。

 

こっち見ないで

こっち見ないで

こっち見ないで

こっち見ろ

(キャットファイト by岡林風穂)

 

映画や音楽の他にハマっているものは、ありますか?

 

うーん、なんだろう。え、何かあります?

お笑いかなあ。お笑い大好きで、お笑いばっか見てます。お笑い芸人って、ステージで戦ってるように見えるんですよ。プロレスラーとかも同じです。胸打たれるんですよ。本当にありがとうございますっていうか、全てが偉大で。私にとってお笑いは、音楽と似てるかもしれないですね。助けられる存在というか。

あとは、ぬいぐるみもハマってるかも。100均行くとクッションとか売ってて、買っちゃうんですよね。あと道端の変なマスコットとか、写真撮っちゃう。あと、ガチャガチャもめっちゃ好きなんですよ。絶対に要らないのに、やっちゃうんですよね。ガチャガチャの商品考える人ってどんな人なんだろう、とか思います。大人になってからやるガチャガチャって、いいと思いません?

 

 

 

あとがき

本当は普段の生活や歌詞について、もっと詳しく聞きましたが、字数の関係で書ききれませんでした。

ただ、字数が足りたとしても、歌詞の意味をつぶさに解説してしまったら面白くないですよね。歌詞の話は私の胸にしまっておくこととします。

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インタビュー, 文: ヒカル